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Adventure Boyz アドベンチャー・ボーイズ

イギリス映画 (2019)

イギリス発の コメディ風味のクライムアクション映画。9歳と7歳の兄弟が主役なので 子供連れファミリー向けの映画。IMDbの評は決して高くはないが、他の映画と大きく異なるのは、User Reviewsの欄に9~10の高得点が並んでいること。子供と一緒に見た親の多くが観て満足し、それを発信している。確かに、映画の中で、兄弟は、通常のクライムアクションには不向きなほど幼いのに、①謎解き、②悪戯仕掛け、③読唇のような頭脳面での活躍と、④強烈なパンチ、⑤必死の逃走などの肉体面での活躍を見せてくれる。しかも、兄弟が、悪党からダイヤを奪うだけでもありえないほど凄いのに、誤認逮捕された父を救うために真相に迫ろうとする姿勢も、これまたありえないほど凄い。悪党のボスと、その手下の2人組の “頭脳レベル” のお粗末さは、コメディタッチなので仕方ないが、その他の部分は、必ず事前に伏線が用意されていて、小学生低学年の兄弟でも実行できると思わせる工夫が施されている(ある意味、説得力を持っている)。一部似た所のある『ホーム・アローン』と同じくらい楽しく、ハラハラ観ることができる。内容は、少し “詰め込み過ぎ” の観があり、あらすじではカットした学校での初恋的シーンと、父のスピードウェイのレースは、横道に逸れて全体を “過密なのに散漫” にさせる結果となり、これが全体の評価を下げている。

イングランド南部の海浜リゾートの町イーストボーンの郊外に一軒の家を構える一家。父は、1994年の欧州選手権で優勝したことのあるスピードウェイのライダーだが、それから20年以上が経過し、家の近くのアーリントンで開催される地元のレースでも久しく優勝から遠ざかり、スポンサーも付かなくなっている。年に似合わぬ “若者のレース” に対する父の執着心は、アメリカ人の妻との間に不仲を生じさせ、妻はニューヨークに帰ってしまう(離婚ではなく別居)。2人の子供サムとジェイクは、地元の私立の小学校に通っている。父は、いろいろな悪戯を仕掛けて子供たちを喜ばせるだけでなく、健康食を勧め、ゲーム機で遊ぶより、体を動かして鍛えることも勧める。そして、必殺のパンチの仕方も。ある日、兄弟が、いつものように自転車で野原に遊びに行った時、2人の日常を根底からひっくり返すことが起きる。兄のサムは、風に舞った紙を拾い、そこに書いてあった謎の言葉を追った結果、50個のダイヤモンドの入った箱を見つける。それは、近くの貴族の城から数日前に盗まれたものだったが、兄弟はそのことを知らない。盗まれたことに気付いたダイヤ泥棒(2人)はすぐに走って後を追うが、町に入ったところで見失う。翌日、兄弟は町の骨董店に行き、それが本物であると知る。ダイヤ泥棒は、骨董店でダイヤが売られたと思い、店主を拘束するが当てが外れる。そこで、目視した自転車から兄弟の家を見つけると、忍び込んでダイヤを取り返そうとする。しかし、兄弟の仕掛けた罠にはまってあきらめ、代わりにガレージに行って父親の古い写真と優勝杯を見つける。そして、ボスに対し、“金に困ったライダーがダイヤを盗んで家に隠した” という偽情報を警察に流すことを提案する。この案は巧く行き、実際にダイヤが発見されたことで、兄弟の父は逮捕される。翌日、兄弟は、父を助けようと、昨日の行動を振りかえってみることにする。そして、骨董店に行った時、店主とは違う人間が電話をかけているのを見る。サムは読唇ができたので、曖昧ながら、警察署と掃除婦というヒントを得ることができた。そこで、さっそく警察署に忍び込み、骨董店で見たボスの指名手配のポスターをこっそり剥がし、掃除婦が証拠保管室に入って行く後をつける。そして、掃除婦が携帯電話をかけたことで、警察署の裏口でダイヤ泥棒が待っていることも知る。サムは、ダイヤを見つけて喜んでいる掃除婦を、父が昔ハロウィーンの時に脅すのに使った お化けマスクで気絶させる。悲鳴を聞いた警部が駆け付けると、サムは、裏口にいるダイヤ泥棒と骨董店にいるボスのことを話し、自ら囮となってボスを逮捕させることに成功する。

この映画で特筆すべきは、監督の息子2人をそのまま兄弟として主演させていること。そして、映画の中の父親も 監督自身が演じている。兄のサム役は、ロリー・フォード(Rory Ford)、弟のジェイク役はフェリックス・フォード(Felix Ford)。2人とも、映画に出てくるセントアンドリュース・プレップという私立の小学校に通っていて、2人が映画に出たことは、学校のウエブサイトのニュース欄にも掲載されている(https://www.standrewsprep.co.uk/pupils-to-star-on-the-big-screen/)。年齢は、ある記事に9歳と7歳と書いてあったので、それを信用するしかない。他に情報は全くない。兄のきれいな金髪は、監督がブルネットなので、母親からの遺伝か? 弟は父と同じブルネット。

あらすじ

TVにハーストモンスー(Herstmonceux)城が映る。この城は、1441年創建で、イングランド最初期の煉瓦造の建物〔19世紀のロンドンは煉瓦の建物で埋め尽くされたが(簡単に石材が手に入らなかったため)、15世紀以前は、城は石、普通の建物は木造か木骨造だった〕。現在は、カナダのクイーンズ大学の国際研究センターとなっている。レポーターが、「この素晴らしいお城も、今や犯罪の現場となってしまいました。ハースト家に代々伝わる50個もの稀少で高価なダイヤモンドが、私の右後ろある厳重に警備された塔から盗まれまたのです」と説明する(1枚目の写真)。そして、少年の独白が入る。「少し説明しておこう。夏の緑が黄金色になる頃のことだった。僕らは、グレン・クローズに住んでる」。ここで、「Glen Close」という袋小路の標識が大きく映る。この映画の舞台は、実は、イーストボーン(Eastbourne)という南イングランドの大西洋に面したリゾートで、映画に登場する町のシーンは、実際にこの町でロケされた。この袋小路も、実際に存在し、グーグルのストリートビューで全景を見ると、2枚目の写真のような郊外住宅地(矢印は標識)。ただし、映画の中で一家の住んでいる家は、ストリートビューで探しても存在しないので、この袋小路を取り上げたのは、次の台詞を言わせるため。「これは、アメリカのすごく才能のある女優さんの名前と同じ〔『危険な情事』 『危険な関係』 『アルバート氏の人生』 『天才作家の妻 40年目の真実』で、アカデミー主演女優賞にノミネート〕。パパは、僕らは 人生の宝くじにあたったんだと言ってる。世界には、飢えたり、蛇口から水が出ない人たちがいる。ましてや、ここには、イングランドの緑の丘や美しい景色もあるからだって。『失って初めて知る、その存在のありがたさ』って格言がある。僕も、すぐにその意味を知ることになる。僕のことは知らないよね。サムって言うんだ」(3枚目の写真)。弟がグラウンドでクリケットのボールを打っている。「これが僕の弟ジェイク。誰もが、可愛いって言う」。次に学校の門のところで、母がサムを抱きしめる。「これがママと僕の学校」。この学校は、セントアンドリュース・プレップ(St Andrew's Prep)という、1877年創設のプレパラトリー・スクール(8-13歳)。えび茶・緑・深紅のストライプの制服で有名。そして、父が、スピードウェイ〔4人の選手が平らなオーバルコースのダートトラックを反時計回りに4周走行するオートバイ競技〕の選手だと紹介される。そして、昔は優勝したこともあるが、それは遥か昔の話だとも。「トロフィーは埃をかぶってる」。最後に、「ママとパパに何かあった。詳しいことは知らないけど、大人って変だから」「おかしなアメリカの車を大事にしてる〔フォードの1972年式グラン・トリノ〕。ママは、『私より車の方が好き』だって。パパはアメリカに夢中で、この車にママを乗せてアメリカ中を回ったんだって。僕は、きっと 後部座席で作られたんだ」。
  
  
  
  

パパは、時々、ヒモとぬいぐるみを使って罠をかける」。サムとジェイクがドアを開けて子供部屋に入ってくると、ドアノブに付けられたヒモが引っ張られ、戸棚の上に乗せてあったぬいぐるみが、サムの胸の当たる(1枚目の写真、黄色の矢印はぬいぐるみ、青の矢印はかけ釘を経由してぬいぐるみにつながるヒモ)。そして、ハロウィーンの時の悪い冗談。父は、子供部屋のワードローブに隠れていて、真っ暗な中で、お化けマスクを被って現れる(2枚目の写真、矢印)。結果は、「ジェイクは何時間も泣いていた」。鳥が屋根の上を飛ぶ。「あの朝… いろんなことが起きる前、鳥が家の上を回って飛んでた。そのサインに気付くべきだった。他にもサインはあった。見るべきところさえ知ってれば。ママが、家を出てアメリカに戻っちゃった」。母がサムとジェイクを抱きしめる。「さよなら、僕たち。パパをよろしくね」。「パパは、この時、ママが出てくのを止めるべきだった。でも、黙って見てた」。母が、呼んだタクシーに乗ろうとするのを 父が見送り、子供たちが 家の中からそれを見ている。「僕は、読唇術のプロだ」(3枚目の写真)〔母と父の会話が分かる〕。「なろうとしたわけじゃないけど、危機を救ってくれることになる」。このセクションは、伏線の紹介という意味で重要だ。
  
  
  

次のシーンは、父のスピードウェイのレース。開催場所は、アーリントン(Arlington)スタジアム。場所は、Glen Closeの5.2キロ北。学校は6.8キロ南南東なので、学校に行くよりも近い〔ついでながら、最初に出てきたハーストモンスー城は9.7キロ北東。すべてが生活距離圏内にぴったりと収まっている〕。ライダー4人がスタートラインに並び、3本のテープが跳ね上がると、一斉にスタート。2人は応援するが(1枚目の写真)、最初からトップに立ったのは、最近ずっと優勝している青年。「パパは、参加することに意義があると言ってるけど、ホントは悔しがってるんだ」。生意気な優勝者は、父を 「家に帰って、おむつを替えるとか、パパらしいことでもしたらどうだい?」と冷やかす。父:「2位だぞ」。「2位は優勝か?」。「何が言いたい?」。「これは 若者のレースだ。もっと意味のあることをやれよ」(2枚目の写真)〔それなりに筋は通っている〕。唇が読めるサムの顔は厳しい(3枚目の写真)。
  
  
  

夜、ジェイクが 「パパ、スタジアムにいた男 知ってるの?」と尋ねる。「ああ」。「どうして、パパに意地悪するの?」。「そういう奴がいるんだ」。その返事に、サムが 「なぜ、何もしなかったの?」と訊く。「何をする? 殴るのか?」。2人とも頷く。「人をやたら殴ることなどできん。相手が 余程のワルでもない限り、暴力は解決にならん」。ジェイク:「ワルなら殴ってもいいの?」。「構わんが… それは、相手がどうしようもない卑劣な奴で、それしか止める手立てがない時だけだ。それに、このことは、ママや先生には 絶対に言うな」。そして、「やる時には、正しくやれ」と言う。サム:「どうやるの?」。父は、サムの鼻梁に指を当て(1枚目の写真、矢印)、「ここを、真っ直ぐ。全身の力を込めろ。相手の大きさは関係ない。だが、パパが教えたんじゃないぞ」〔重要な伏線〕。翌日、父と母が電話で話すシーンがあるが、そこで、父が土曜日にレースがあると言ったことで、母から 「もう25じゃないのよ。あなたは父親なの。もっと行動に責任を持って」と苦言を呈せられるが、父は 「他に何がある?」と答える〔Web検索したら、競馬で引退後は牧夫。競輪では競輪場の職員やガードマンと書いてあったが…〕。子供たちがノートパソコンやラップトップを使ってゲームをしているのを見た父は、「何してる?」と文句をつける。サム:「テニス、してる」(2枚目の写真)。「お前は?」。「サッカー」。「寝転がってるだけじゃないか。外に出て、ボールで遊べ」。サムは 「しーっ」と言い、“放っといて” と仄めかす。
  
  

父は、ガレージに置いてあるサンドバッグに怒りをぶつける。そこにサムが来て、「怒ってるの?」と訊く。父は 「パパはボクシングができて楽しいが、何より、現実にバッグを殴って味わえる感覚は他にない」と、意義を話す(1枚目の写真)。「いいか、お前が指でいくらゲームをしても、この感覚は絶対に味わえない」。そして、スピードウェイにも触れ、「あれこそ冒険なんだ」と言い、さらに、「一生、ディスプレイの前に座り続けて欲しくないんだ」とも。そして、「ここに来い」とサンドバッグの前に立たせる。「バッグを叩きたいか?」。サムが一発叩く。それは不十分だったようで、「バッグを本気で叩きたいんなら、ただ バッグを叩くんじゃない、バッグを突き抜けるんだ」と教える。「その時には、まさか、生きるか死ぬかの状況で、それが役に立つとは、知る由もなかった」。サムは、父に教えられた通りにバッグを全力で殴る(2枚目の写真、矢印はサンドバッグ)。その様子を、ジェイクがじっと見ている(3枚目の写真)。
  
  
  

これを機に、2人の特訓が始まる。最初は、ボールを使った “正確さ” の訓練。カラーテニスボールをチャッチさせることで、体が回転したり ぶつかった時の即応力を高めるもの(1枚目の写真)。対象となったのはジェイクで、父が投げたボールを素手でつかもうと何度もトライし、ボールに手が当たるようになってからしばらくして、ようやくチャッチに成功(2枚目の写真、矢印はカラーテニスボール)。次は、雲梯(うんてい)という遊具を使った筋トレ(3枚目の写真)。終わった後、父は「何が食べたい?」と訊き、「お菓子」「チョコ」という返事を聞くと、「一緒に来い」と言い、St Mary’s Walkという歩行者しか入れない商店街に連れていく。街角の立て看には、「50万ポンドのダイヤ盗難」と書かれている〔当時の換算率で7250万円/50個なので1個1万ポンドになるが、後で、ジェイクがダイヤを1つ手に取るが 大きさは2-3カラットくらいなので、平均相場は2カラットで1個12000ポンド。“稀少で高価な” という表現には該当しない〕。父は果物と野菜が並んでいるコーナーに行き、「いいか、これがカロリー食品だ。この色を見ろ。みんな自然が作ってくれたんだ」と教える(4枚目の写真)。
  
  
  
  

2人は、ニューヨークにいる母と、父としたことを楽しそうに話すと(1枚目の写真、矢印はスマホ)、自転車に乗って出かける(2枚目の写真)。この映像で撮影場所が確定した〔後ろに見える丘が決め手になった〕。3枚目の写真はグーグルのストリートビューで見たWannock Gardensと呼ばれる住宅地。全く同一で、2人はこの手前右の家から出てきた〔後で紹介〕。因みに、本来の住所とされたGlen Closeとは250メートルしか離れていない。2人は、その後、野原に出て行くが、円筒状の干し草が点在している(4枚目の写真)。
  
  
  
  

野原を1枚の紙が舞う。それに気付いたサムは、自転車を急停止させ(1枚目の写真、矢印は紙)、紙を拾って読む(2枚目の写真)。そこには、「黒い風車の向こう、2羽のツバメが鍵を持つ」と書かれていた(3枚目の写真)。ジェイクは、「捨てちゃおうよ。僕らと関係ない」と言うが、サムは 「待てよ、黒い風車なら丘陵の反対側にある」と乗り気。それでもジェイクは 「でも、何マイルもあるよ」と消極的。「行くぞ。調べてみよう」。兄は常に勝つ。
  
  
  

2人は黒い風車に着く(1枚目の写真)。この風車は、残念ながらイーストボーンにはない。21キロ西にあるRottingdeanという村にある1802年に作られたBeacon MillというGrade II(2級)のイギリス重要建造物。やる気まんまんのサムは、風車の少し下の草むらに置いてあった木の小箱を見つける。蓋には、2羽のツバメが描かれている。蓋はすぐに開き、中には別の紙と1個の鍵が入っていた。紙には、「B13、真夜中、キラキラ」と意味不明なことが書いてある(2枚目の写真)。「本〔book〕のBかな?」。ジェイクは、「まずいこと〔bad idea〕のBだ。ねえ、帰ろうよ」とここでも消極的。「待てよ。B13… Kneecap Hill〔架空〕には14個の掩蔽壕〔bunker〕があるぞ。ママやパパと一緒に行っただろ」。ジェイクは 「何マイルもあるよ。もうすぐ暗くなる」と反対するが、「鍵もあるんだ。調べてみなくちゃ」で終わり。兄は常に勝つ。
  
  
  

2人は森の中を快調に飛ばす(1枚目の写真)〔この映画では、こうした移動撮影が多い〕。そして、海を見晴らす崖の端には 円筒形の掩蔽壕がある。先に潜り込んだジェイクが「中に何かあるよ」と言ったので、サムが後に続き、「ホントだ、何だろ?」と言う(2枚目の写真、左がサム)。2人は入口〔反対側にある〕から中に入り、サムが、先ほど見つけた鍵を突っ込んで回す(3枚目の写真、矢印)。すると、少し離れた場所にいた男が持っていた意味不明の装置が動き出す(4枚目の写真、数字が動き出す)。
  
  
  
  

意味不明の装置を持っていたのは、怪しい男2人組で、「まさか そんな… 真夜中のはずだろ」と言いながら、双眼鏡で様子を伺う(1枚目の写真)。サムは鍵で開いた箱の中に、象牙でできた小さな箱があるのを見つけ、蓋を開けてみる。中にはダイヤモンドがぎっしり詰まっていた(2枚目の写真)。2人組のいる場所からは、掩蔽壕の狭い開口部しか見えないので、双眼鏡を使っても中まではよく見えない。「中に誰かいる」。「何だと?」。中では、ジェイクが、「すごい、ダイヤだ! 本物かな?」と兄に訊く。「つきとめてみよう」。兄弟が掩蔽壕から出ると、2人組にも中にいたのは子供だと分かる。そこで、見張っていた柵を乗り越えて掩蔽壕に向かって走る。これはヤバいと思った兄弟は、大急ぎで自転車に乗る(3枚目の写真)。ダイヤを盗られたことを知った2人組は、走って追いかける。深い森の中なので、自転車の方が早いわけではなく、ジェイクが転倒したこともあって、追いつかれそうになる(4枚目の写真、矢印は男)。幸い、森から出ると、一気にスピードが上がり、そのまま逃げ切る。
  
  
  
  

それでも、2人組は、兄弟の住んでいる住宅地の近くまでは辿り着いていた。くたびれ果てて路地に座り込んだ2人。キャップを被ってない男が、「ボスに殺されちまう。あいつら、何で分かったんだ?」と訊く。キャップの男は、「飛ばされた紙かな?」と言い出す。「何だと?」。「取引の紙を書いてたら、外に出て花を見たくなった。今、ちょうど満開だから見逃すって手はないだろ〔彼は、園芸マニア〕。そしたら、風が吹いて紙が持ってかれた。つかもうとしたが、どこかにいっちまった。茂みにでも引っかかったと思ってた。だから、もう1度書き直した」(1枚目の写真)。この2人がハーストモンスー城からダイヤを盗んだのか? そして、掩蔽壕で真夜中にダイヤの買い手と会うつもりだったのか? こうした重要な点が、キッズ映画なので実にいい加減。そもそも、なぜ “謎々のような紙” が必要なのだろう?
 その後、2人はボスらしき老人の前に出向く。キャップを被ってない男は、「そもそも、ダイヤをあんな所に隠すのは、お前が言い出したことだ。紙をなくしたのもお前だし、紙自体、馬鹿げてた」と相棒を非難する〔そんなに反対だったのなら、なぜ止めさせなかった?〕。キャップの男は、「俺は、犯罪者になんかなりたくなかった。庭師になりたかった。土地を買って、チューリップや草花を植えたかった」と、泣き言を言う。そのやりとりを聞いていたボスは、「黙れ! お前らは、2人のガキに笑い者にされたんだぞ! 今回の分け前で、一生楽しめる土地が買えたろうに、今のままだと浅い墓が2つ掘られる。うち1つは半分のサイズの墓だ。残りの半分は、失敗は許さんという警告として、剥製にして わしの机に飾ってやる」と脅す。そして、「行け! ダイヤを持って来い! さもなくば2人のガキだ!」と、2人の無能な手下を叱咤する(2枚目の写真)。
  
  

一方、自室に籠った兄弟。ジェイクが、ダイヤを1粒持ってじっくりと見る(1枚目の写真、矢印)。サムは、「お金で何をしよう?」と言い出す〔2人は、盗難のことを知らない〕。「ヘリを買うとか」。「それなら、プライベート・ジェットの方がいいな」〔50万ポンドではとても足りない〕。サムは少し考え、「パパが言ってたように、困っている人たちを助けることもできる」と言い直す。「ママとパパは、何がしたいかな?」。「みんなでアメリカに行くことさ」。「パパに話すべき?」(2枚目の写真)。「ううん、内緒にして、びっくりさせよう」(3枚目の写真)。そして、「まず、本物かどうか調べないと」。
  
  
  

翌日、2人は骨董店(Jasper Wood Antiques)に行く。小さな子供が入るような店ではないので、店主は不審に思い 「いらっしゃい」と声をかける。サムは、「ええと、あの、見てもらいたいものがあるんだ。幾らするか教えてくれる?」とダイヤを1つ取り出す。店主は、虫メガネで念入りに確かめる(1枚目の写真)。そして、上質の本物だと分かると、「残念だが、無価値だ。偽物」と言ってがっかりさせた後で、「君たち、お小遣いが欲しいんだろ? 10ポンド紙幣1枚と交換してあげてもいいぞ。そんなお札、見たことないだろ?」と誘いかける。しかし、サムは、平然とした顔で、「いいよ、ありがと」と言うと(2枚目の写真)、ダイヤを取り上げ、店を出て行く。店主は、「分かった、50でどうだ? 100では?」と声をかけ、それを聞いたサムがニンマリする(3枚目の写真)。
  
  
  

兄弟が店を出て、歩道に倒しておいた自転車を起こしていると(1枚目の写真)、たまたまその通りの入口にいた2人組がそれに気付く。「あいつらだ」。「骨董店から出てきたぞ」。「行くぞ、売ったに違いない」。2人組は店の前まで行くと、他の客が入ってこないようにドアを閉める。そして、店主に詰め寄ると、体につかみかかる。店主は事情を説明するが、口にガムテープを貼られる(2枚目の写真)〔その後、拘束された状態でボスと一緒にいるシーンがチラと映るが、ボスの所に連れて行かれたのか、ボスが店まで出向いたのかは不明〕
  
  

家に戻ると、ジェイクが 「あの2人、きっと泥棒だよ。ここまで来たらどうする?」と心配する。サムは、父の仕掛けを思い出し、「心配するな、いい考えがある」と言う。そして、サムが煉瓦を、ジェイクがヒモを持った姿が映る(1枚目の写真、矢印は煉瓦)。その後、サムは棘のついたバラの枝を切り、次いで、小屋の屋根の “垂木(?)” を片方取り外し、動くように細工をしてから再度取り付ける(2枚目の写真、矢印はバラの枝)。垂木の先端には棘の枝を縛り付け、垂木が落ちてくるタイミングを決める糸を張る。その後は、煉瓦の仕掛けのセッティング。2人組の泥棒は住宅地を捜し回り、兄弟の自転車を見つけ、暗くなってから侵入することに決める。しかし、小屋に近づくと、セキュリティ・ライトが点き、それに気を取られて罠の木の枝を踏むと、垂木がお尻に落ちてきて(3枚目の写真、矢印)、痛いし、棘も刺さる。裏口に回り、ガラスを外して室内側の錠を回して外し、ドアを開けて中に入ると、ぬいぐるみと同じ要領で煉瓦が落ちてきて(4枚目の写真、矢印は煉瓦)、股間を直撃。ホーム・アローンのノリだ。
  
  
  
  

ガレージに入り込んだ2人組。そこで、キャップの男は、兄弟の父の若い頃の写真が放置してあるのを見つける(1枚目の写真、矢印、その右にはトロフィー)。「何と、マイク・ハリスだ。スピードウェイのライダーだぞ、ここは彼の家に違いない!」。そして、一番大きなトロフィーを見て、それが1994年の欧州選手権で優勝した時のものだと気付く〔彼は、花が好きというだけでなく、偶然、スピードウェイも好きで、試合を見に行っていた〕。そして、邪悪な思い付きを相棒に話す。「ハリスは、ここずっと勝ってないから、賞金ももらってないし、スポンサーも離れたんだそうだ」。「何が言いたい?」。「誰がダイヤを盗んだか、知ってる奴はいない。ハリスに疑いがかかったら、犯人としちゃバッチシだ。収入が途絶えてるからな」。ここで、場所が、ボスのアジトに変わる。「俺がサツに匿名電話をかけ、マイク・ハリスが犯人だと教える。家宅捜索してダイヤが見つかったら、奴は万事休すだ。ダイヤは、数日 事務手続きで留め置かれた後、返却される」。「何で知ってる?」。「お袋が、ここの警察で掃除婦をやってる〔あまりにも偶然〕。証拠保管室にも入れる。ダイヤを頂戴して俺に渡してくれりゃ、一件落着だ。ハリスは、一生獄中で過ごすってワケさ」〔誰も入れない証拠保管室からダイヤが紛失すれば、掃除婦が第一容疑者になる〕。ボスは、この “穴だらけ” の案が気に入る。「条件がある。うまくいかなかったら、後はないと思え」(2枚目の写真)。
  
  

翌朝、兄弟が、父の用意した生野菜を手づかみで食べていると、父が 「ここで何をやらかした? 煉瓦がぶら下がってるぞ?」と訊く。2人は、これはヤバいと顔を見合わせる(1枚目の写真、矢印はヒモで吊った煉瓦)。その頃、家の前にはパトカーが停まり、警官達が玄関に向かう。サムが、「話しておかなくちゃいけないことがあるんだ」と父に言った時、ドアがノックされる。父がドアを開けると、そこに大勢の警官がいて、私服の男が 「マイケル・ハリスさん?」と訊き、父が頷くと、警察手帳を見せ、「主任警部ピーター・ヘクターです」と名乗る(2枚目の写真)。そして、「1984年警察・刑事証拠法32条に基づき、あなたの建物に入ります」と宣告すると、警官達が家の中に容赦なく踏み込む。事情の分からない父は 「ちょっと待って、一体何です?」と戸惑うが、警部は 「落ち着いて」と言うだけ。「落ち着いてますよ。でも、これはバカげてる」(3枚目の写真)。
  
  
  

この困った事態に、サムは 「きっと、ダイヤのことだ」とジェイクに囁く(1枚目の写真)。ジェイクは 「話そうよ」と言う。その時、婦警が 「ありました!」と言って、ダイヤの箱を持って2階から小走りに降りてくる。父は 「私のじゃない」と言うが、即座に逮捕される。「あなたには黙秘権があります。なお、供述は、法廷であなたに…」。父は 「バカげてる」をくり返し、それを見たジェイクは自責の念にとらわれる(2枚目の写真)。2人が父に白状しようと寄って行くと、婦警に止められる。何も言えない2人は、父に向かって叫ぶ(3枚目の写真)。ジェイク:「パパは何もしてない」。婦警:「落ち着いて。お父さんにはちゃんと対処するから。動揺するのは分かるけど、これは法律なの…」。サム:「だけど、パパは何もしてない」。「そうだよ。僕らが見つけ…」。「いいこと、お母さんにはすぐ連絡するから、それまでは一緒に来なさい…」。何を言ってもラチがあかないと思った2人は、顔を見合わせ、その後、サムが、「テディ〔ぬいぐるみ〕がいないと、すごく寂しい」と言い出し、2階に行く許可を得る。
  
  
  

その後のアクションは、小さな子供なのに頑張っているので、写真を多用して紹介しよう。ジェイクが先に階段を登り始めると、サムは、階段の一番下の角に置いてあった “邪魔になるもの” を倒し、「ジェイク、走れ!」と叫ぶ。サムは、子供部屋の窓を開けると、「ジェイク、窓から出ろ!」と聞こえるように叫ぶが、指はベッドの下を指す(1枚目の写真、矢印)。ジェイクがベッドの下に転がり込み、次いでサムが隠れると、婦警2人が駆け込んでくる(2枚目の写真)。そして、開いている窓から外を覗き、「どこにもいない。飛び降りたんだわ」と見回す。その隙に、サムがベッドの下から逃げ出し、ジェイクがそれに続く(3枚目の写真)。それに気付いた婦警がジェイクを追いかけるが、ジェイクは、カーペットの敷かれた階段の上を上手に滑り降りる(4枚目の写真)。キッチンに入ったサムは、先にシンクの上の窓からジェイクを逃がし(5枚目の写真)、ジェイクは飛び降りた後、勢い余って前方一回転する。後になったサムは、婦警に片足をつかまれるが、振り切って逃げる(6枚目の写真)。その後、2人は裏木戸からガレージに回り、サムがゴミ箱を倒して婦警を遅らせ、置いてあった自転車に乗る。その先には、パトカーと警察車両が邪魔をしていたし、警官も阻止しようしたが、隙間を上手にすり抜けて脱出する。2人が自転車を走らせるのは、実際に家のあるWannock Gardens ではなく、筋書き通りのGlen Close。
  
  
  
  
  
  

父は、警察署に連れて行かれる。受付にいるのは、変な巡査部長。主任警部が直々に連れて来たのに、父に向かって、「あんた誰だね?」と訊く。名前を言うと、「マイケル? いいじゃないか。職業は?」。職業を言うと、「スピードウェイのライダー?」と言って笑い出す。「そりゃいい」。そのふざけた態度を見ても、主任警部は何も注意しない。「素晴らしい。逮捕の理由は?」。ようやく警部が、「50万ポンドのダイヤモンドの盗難」と言う。「胸が悪くなる」。「やってない」。「胸が… 悪く… なる」。「これは何かの冗談か?」。「冗談だと? 実に真面目だ」。「いいか、私の子供たちがいなくなって、どこに行ったか分からん。なのに、何もしてくれない」。「失礼だが、もうちょいと罪が軽けりゃ、あんたも、家で子供と遊んでいられたんだ」。このシーンは、非現実的で好きになれないが、重要なのは、後でサムとジェイクが忍び込んだ時に隠れる場所が映っていること(写真、矢印)。
  

兄弟は、町から少し離れた聖母マリア教会〔家の南南西6キロ、家から教会まで、Jevington Rdという田舎の一本道で行ける〕の横にある池まで行くと、デッキに座り込む(1枚目の写真)。ジェイク:「僕らのせいだ」(2枚目の写真)。サム:「何とかしないと」(3枚目の写真)。「ママに電話する?」。「逮捕されたのはパパだ。ママに電話しても仕方ない」。「パパを救い出さなきゃ」。「土曜にレースもあるし。今度のことで出場できなかったら、許してもらえない」。「お腹空いた」。サムは、商店街で果物を見たことを思い出す。「行くぞ、考えがある」。
  
  
  

2人は、また家に戻る。家の前には立入禁止のテープが貼られ、1人の警官が見張っている。2人は、手前に自転車を置くと、植込みの陰から様子を伺い、警官が後ろを向いた時を狙って忍び込む(1枚目の写真、矢印は警官)。2枚目の写真は、先に述べたように、グーグルのストリートビューでWannock Gardensを見つけた時、その右にあった建物。1枚目の写真と比較し、同一であることが確認できる。2人は、キッチンで水筒に水を入れた後、子供部屋に行き、ジェイクは羽織るものをバッグに詰め(3枚目の写真)、サムはワードローブに入っていたお化けマスクを、ハロウィーンの時を思い出して(4枚目の写真、矢印)、バッグに入れる。
  
  
  
  

留置所に入れられた父は、ニューヨークにいる妻に電話をかける〔妻は、何度も自宅の固定電話にかけたが、誰も出ないので心配していた〕。心配する妻に対し、父は、逮捕されたとは言い出しにくいので、あたかも自宅にいるように応対する。それを鉄格子の外で聴いていた看守役の警官は、妻が 「ちょっと話していい」と子供達と話したがった時の 父の慌てぶりを可笑しそうに見ている。その頃、サムとジェイクはSt Mary’s Walkの店に行き、ジュイクは両手に2個の果物を、サムはバナナを手に取ると(1枚目の写真、ピンクと黄色の矢印)、「後で返すから」と言って盗む。次の場面では、主任警部が監房の前にいる。警部は 「もし、君が主張するように無実で、なおかつ、君の家からダイヤが見つかったということは、真犯人は君の息子たちだということになる」と言った上で、「私の経験からすれば、人が逃げ出す場合、何らかの罪があるからだ」と付け加える〔子供たちは逃げ出した〕。「息子たちは いい子だ。そんなこと するはずがない」。「これを見てみろ」。警部は、店内の監視カメラの映像を見せる(2枚目の写真)。「君の息子たちが “するはずがない” って? 店の人も驚いただろう」。父は頭を抱える(3枚目の写真)。
  
  
  

教会に戻った2人は、“借りて” きた果物を分け合って食べる(1枚目の写真、矢印)。同じ頃、誰もいなくなった家に、母からの電話が入る。執拗に鳴りやまない電話に〔先ほど電話したばかりなのに、誰も出ないので心配になった〕、外で警備していた巡査が家に入って行き 電話を取る。「ジャクソン巡査です」。「何ですって?」。「あんた誰?」。「ルーシー・ハリスよ。あなたこそ、いったい誰なの?」。「あんたの家を警備してる警官だ。あんたの夫は留置所だし、子供たちは逃走中だ」(2枚目の写真)。その結果、監房の前の電話が鳴り出す。警官がそれを取る。「ルーシー・ハリスです。夫と話をさせて」。彼女は、空港から電話をかけている。一刻でも早くロンドンに向かう気だ。妻からの電話だと分かった父は、“受話器を取らない” と仕草で警官に伝えるが、警官は、嬉しそうに受話器に向かって、「今から、独房にいる旦那さんにこれを渡しますよ」と言う。妻の激しい口撃に、父はたじたじとなる。一方の子供達。夕方になったので、その夜寝る場所を求めて教会の中に入って行く(3枚目の写真)。
  
  
  

翌日。久しぶりにサムの独白が入る。「変な夢のせいか、教会にいたせいか分からないけど、誰かに言われたことを思い出した。『もし、どうしていいか分からなくなって迷ったら、来た道を戻ってみろ』。だから、そうすることにした」。2人は掩蔽壕に行く。ジェイクはそこで、キャップの男が持っていた意味不明の装置の残骸を見つける(1枚目の写真、矢印)。一方、サムが見つけたのは、もう一人の男が持っていた双眼鏡。2人とも、兄弟を追いかけるのに必死で、置き忘れたのだ。装置の方は、最後まで意味不明で ジェイクは捨てるが、双眼鏡の方は役に立つ。それは、次に訪れた骨董店。帳場〔骨董店なので古い呼び方を使った〕には何と店主ではなくボスがいる(2枚目の写真)。そして、スマホで話している。サムはさっそく双眼鏡を取り出す。「突然、長年の読唇術が役に立った。その腕前を使っても 難しかった。確かじゃないけど、警察署のことを言ってた。掃除婦のことも… 変なの。だいたい、彼は店の主人じゃない。あの泥棒どもが、何かしたに違いない。きっと恐ろしいことだ。パパを助け出したいなら、もっと思い切ったやり方をする時だ」(3枚目の写真、矢印は双眼鏡)。4枚目の写真は、骨董店のある通りのストリートビュー。矢印は骨董店Jasper Wood Antiques。道路を挟んで反対側の一番下の煉瓦と石の壁は、3枚目の写真で、サムの背後に映っていたものと同じ。この写真から、サムがかなり遠くから “読唇” をしていたことが分かる。
  
  
  
  

警察署では、受付の右側にある掲示板の辺りを掃除婦が毛ばたきできれいにしている。サムとジェイクがその前を這い進み(1枚目の写真)、最初の “受付シーン” の写真で矢印を付けておいた窪みに隠れる(2枚目の写真)。そして、そこから掲示板に張られた指名手配の犯人のポスターを見る(3枚目の写真、中央の男がボス)。「あの顔、見覚えがあるな」。そして、骨董店にいた男だと思い出す。「これで、“掃除婦” の意味が分かった」。
  
  
  

その掃除婦は、窪みに隠れた2人に気付かずに巡査部長の後ろに行くと、巡査部長の肩を毛ばたきで払い始める。そして、巡査部長が嫌がると、証拠保管室の掃除をしに行きたいと言い出す。巡査部長が、掃除の必要はないと言うと、掃除婦は勤務時間の残り2時間、その場に居座り、「あんたさんを、ピカピカにしてあげる」と脅す。その間に、サムは掲示板から、先ほど骨董店にいた男のポスターを素早く剥がし取る。巡査部長は 仕方なく鍵を出し、掃除婦はしめしめとばかりに鍵を受け取る(1枚目の写真、矢印)。2人は、すぐに掃除婦の後を追う(2枚目の写真)。すると、地下の証拠保管室の入口で、掃除婦が携帯で話す声が聞こえる。「鍵は手に入れたよ。裏口でお待ち。すぐに宝石を持っていってあげる」(3枚目の写真)。警察署の裏では、キャップの男が 「分かった、母ちゃん」と嬉しそうに返事する(4枚目の写真)。
  
  
  
  

電話を終えると掃除婦は証拠保管室の鍵を開けて中に入り込む。2人もすぐそれに続く。掃除婦は、初めて中に入るので、どこを探したらいいのか戸惑う。サムは、物陰から様子を伺うと(1枚目の写真)、バッグから “お化けマスク” を取り出し、近くに寄って行く。掃除婦は遂にダイヤと箱の入ったポリ袋を見つけ 喜びに顔を輝かせる(2枚目の写真、矢印)。すると、棚の向こう側から黒いものが徐々に立ち上がり、白骨の怪物が姿を見せる(3枚目の写真)。掃除婦は悲鳴を上げて卒倒する。
  
  
  

その悲鳴は、独房の父にも、裏で待っている悪党2人にも、そして何より警察官にも聞こえた。主任警部と警官2人が、直ちに証拠保管室に駆け付ける。そして、倒れた掃除婦を調べる。兄弟を見つけた警部は、「この可哀想な女性に何をした? 逮捕しろ」と部下に命じる(1枚目の写真)。2人は証拠保管室から飛び出し、1階の廊下まで逃げたところで警官に捕まってしまう。サムは、警部に向かって、「何が起きてるか知らないだろ?」(2枚目の写真)「掃除婦の息子が裏口でダイヤが来るのを待ってるんだ!」と叫ぶ。「バカバカしい」。サムは、先ほど剥がし取ったポスターを取り出し、「この男が どこにいるか知ってる。パパを返してくれたら、この男を渡してやる」と提案する(3枚目の写真)。警部は、「もし、こいつが真犯人だと証明できたら、パパは自由にしてやる」と逆提案する。
  
  
  

映画では、順序が違っているが、ここでは時系列的に紹介する。警部が最初にしたことは、“裏口でダイヤを待っている掃除婦の息子” が本当にいるかどうかを確かめること。2人組は、すぐに逮捕される(1枚目の写真、左の警官の手にあるのは手錠)。これで、サムの提案の信憑性は飛躍的に増大したので、真犯人である証拠が得られるよう、サムの体に小型の隠しマイクが貼り付けられる(2枚目の写真)。
  
  

これだけの準備をした後で、兄弟は骨董店に入って行く。相手が “例のガキども” だとは知らないボスは、「坊やたち、何の御用かな?」と2人を迎える。サムは、ストレートに、「あんたの手下たちは、ダイヤを手に入れ損ねたよ。だから僕らが相手だ。取引しよう」と提案する。ボスは、「ダイヤを盗んだのは俺様だぞ」と自慢した上で(1枚目の写真)、「だがいい…」と、応じるふりを見せ、いきなりジェイクをつかんで首を絞める。「これが、俺の “取引” だ。今すぐダイヤを渡すか、こいつの首を へし折ってやる。そうだな… アイス・キャンディーの棒みたいに」(2枚目の写真)。「僕の弟だぞ!」。「なら、急いだ方がいい。さもないと、2人ともへし折るぞ」。この “絶対的な悪” を前にして、父の言葉が頭を過ぎる。「相手が 余程のワルでもない限り、暴力は解決にならん」。サムは、「あんた、『ワル』だよね?」と訊く。ボスは、不気味に笑う。「ここを、真っ直ぐ。全身の力を込めろ」。サムは、その言葉を思い出す(3枚目の写真)。そして、ボスの顔をじっと見つめると、右手を握りしめる。「本気で叩きたいんなら、バッグを突き抜けるんだ」。サムは、拳を振り上げ、全身の力を込めてボスの鼻梁を殴る(4枚目の写真)。ボスは倒れ、2人は抱き合う。
  
  
  
  

骨董店の前には、待機していたパトカーが乗り付け、ボスが連行される。車に乗せられる前に、サムを恨めしそうに指差すが、鼻から血を流し、手に持ったティッシュは赤く染まっている(1枚目の写真)。サムはそれを見て、“やっちゃった” と、申し訳なさそうな顔になるが、主任警部から、「ダイヤを盗んだのは俺様だぞ」の証拠の録音を聞かされると、満足げな顔になる(2枚目の写真、矢印は録音機)。「要するに、ヘクター警部にとっては、かなり嬉しい1日じゃなかったかと思う。でも、まだ、かなり大事なことを やり残してる。ママが戻って来る前に、何とかしなきゃ」。兄弟は、鉄格子ごしに父と抱き合う(3枚目の写真)。そこにやってきた主任警部が、「書類手続きが少しあり、出られるまで 3-4時間かかります」と説明する。それを聞いたジェイクは、「レースに間に合うね、パパ」と話しかける〔この日はレースの開催される土曜だが、ジェイクは開催時間を知らない〕。父は、「いいや、もうレースなんかどうでもいいんだ。お前たちが無事だった。大事なことは それだけなんだ」と、もう間に合わないと知っているので、そう返事する。それでもジェイクは、「パパ、出なきゃ。それこそパパだし、パパが大好きなことだ」と主張する。父は 「だが、始まるまで、あと30分しかない」と、出られない理由を警部に言う。すると、誤認逮捕に責任を感じていた警部は、真犯人逮捕の恩返しとばかりに、机の上に置いてあった警官の服を 「これを着て」と渡す。「パパは、一気に生き返った」。
  
  
  

父と兄弟は、署の前に停めてあったパトカーに乗り込む(1枚目の写真)〔アーリントン・スタジアムまでの実走行距離は12キロ。パトカーがサイレンを鳴らして走れば、父の着替え時間を含めても、スタート10分前にはスタジアムに到着できる〕。疾走する車内では、警官の服を着た父が、夢を叶えてくれた2人の息子にキスをする(2枚目の写真)。一方、タクシーで自宅に戻った母は、警官から渡された通信機でスタジアムに直行途中の警部と話すことができた。話の前半は、①子供たちは無事、②誤認逮捕の詫び、なので母は喜ぶが、後半で、③スタジアムに向かう途中、だと聞くと、「気は確か?」と態度が急変。通信機を警官に返すと、夫の愛車でスタジアムに向かう〔こちらは、実走行距離は6.5キロしかなく、市街地は通らない〕。父は、2人の息子の手を取ってスタジアムのゲートまで行くと、息子たちを観客席に行かせ、自分はレース服に着替え、オートバイに乗ってスタートラインに並ぶ。母は駐車場に車を停めて走るが、レースは始まる。いつものように、生意気な若者がトップに立ったが、今日の父は気合が入っていて、カーブで首位に出る。しかし、その直後に転倒し(3枚目の写真)、レースは中断。負傷した可能性の高い父に向かって関係者が集まる。一方、息子たちを見つけた母は、2人を抱きしめる。
  
  
  

顔に血と泥をつけた父は 何とか立ち上がると、審判のところに行き、「子供たちが見ている。こんな形で立ち去るのを見たら、何を学ぶと思う? 子供たちには、どんなことも可能だと知って欲しい。あんたも父親だから 分かるだろ? お願いだ、レースをさせてくれ。これを最後に引退する。約束する」と懇願する。この言葉に心を打たれた審判は、再レースを認める。2分の余裕が与えられ、父は、フェンスのところにいる息子達と妻に会いに行く(1枚目の写真)。「ママとパパが、あんな風に見つめ合うの、見たことがなかった。あんなのが、支え合いと… 感謝って言うのかな」。そして、ライダーはスタートラインに並び、一斉にスタート。今度は、最初から父がトップに立つ。ターンも、誰も見たことがないほど見事。そして、堂々と首位を保ったままゴール(2枚目の写真)。シャンパンを開けて喜ぶ父を 3人が祝福に行く(3枚目の写真)。
  
  
  

後日談。サムとジェイクは、果物を “借りた” 店に お金を返しに行く。その頃には、少年達の活躍はマスコミで報道されていたであろうから、店主は嬉しそうに受け取る。刑務所に収監されたキャップの男は、屋外ブースで草花を愛でている。そして、濠で囲まれたハーストモンスー城。城に至る橋の前で、父の車が停まる。待っていた執事が、車の中を覗き、「あなた方が、あの御二人ですな」と言いながら、ドアを開け、「ジェイク坊っちゃま、サミュエル坊っちゃま、こちらへ」と優しく声をかける。息子たちと一緒に橋を渡る父に、執事は「レディー・ハーストがお待ちかねです」と話す(1枚目の写真)。レディーが待っている部屋に入って行くのは子供たちだけ。執事に連れられて階段を下りる。執事:「レディー・ハーストを紹介させていただきます」「ジェイク坊っちゃまと、サミュエル坊っちゃまです」。2人は、左足を後ろに下げて膝を曲げてプリエの形にし、腰から身体を曲げる伝統的な挨拶をする。レディー:「あなたたちは、信じられないほどの勇気を見せてくれました。それは報われないといけません〔bravery and courageという表現を使っている→共に「勇気」としか訳せないが、前者は恐怖を感じないで突き進む勇気、後者は恐怖を感じても危険に立ち向かう勇気〕。そう言うと、手に持った2個の革製の小袋を、サム、ジェイクの順に渡す(2枚目の写真、矢印は小袋)。2人の着ているのが、冒頭で言及したセントアンドリュース・プレップ校のえび茶・緑・深紅のストライプの制服。小袋の中には、ダイヤが、それぞれ5個ずつ入っている〔10万ポンド≒1450万円〕。映画は、一家4人で、家の裏に広がる丘に自転車で遊びに行くシーンで終わる(3枚目の写真)。父はレースをやめ、母はニューヨークで暮らすのをやめ、仲良く4人で暮らしました、という結末であろう〔父の職業は?〕
  
  
  

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